書評「英語独習法」
January 5th 2021
久々の書評。今回は巷で話題の「英語独習法」の書評です。
出会い
例のごとく、Twitterの英語クラスタで話題になっていたので、私も英語独習者の一人として読んでみたく、拝読してみました。 一部で反響があったせいか、ネットの本屋では2020年12月末時点で結構品切れだったようですが、私は六本木のブックファーストでゲットしました。
<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">本屋で見つけたので買ってみた <a href="https://t.co/O3DUUVkBVm">pic.twitter.com/O3DUUVkBVm</a></p>— しろうま (@siro_uma) <a href="https://twitter.com/siro_uma/status/1341600685398212615?ref_src=twsrc%5Etfw">December 23, 2020</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>内容
細かい内容は実際に本を読んでいただくとして、個人的に本書から読み取ったポイントとしては「英語スキーマの構築」だと認識しています。
英語スキーマ
スキーマとは知識のシステムであり、言語を扱うには豊かなスキーマが必要です。 言語におけるそれは氷山の表面下のような、言葉では言い表せない無意識なレベルのものであり、日本語と英語ではまったく異なるスキーマが必要になります。 日本語のスキーマに影響を受けない形で、英語のスキーマを構築することが、より正確で自然な英語につながるようです。
本書内の例で言うと、ashamed と embarrassed は共に"日本語"の意味で言うとどちらも恥ずかしいという意味になりますが、英語の意味ではそれぞれ微妙にニュアンスが違います。「靴下に穴が空いていて恥ずかしかった。」という文では、ashamedではなくembarrassedが自然な表現となります。 上記の例で、うっかり日本語のスキーマを使って、I feel ashamed. と言ってしまうと、英語スキーマの世界では不自然な意味となってしまうのです。
英語スキーマの構築
それではどのように英語スキーマの構築をすれば良いのか。本書ではざっくりと3つの方法を説いています。
- 英語独自のスキーマを構築するために、英単語の日本語の意味をただ暗記するのではなく、コーパスやコロケーションなどの情報を用いて、より生きた形での英語単語の学習
- 多読でなく熟読(熟見)
- 熟書
それぞれについて簡単に説明していきます。
コーパスを用いた英語スキーマ探索法
上述の通り、日本語と英語ではスキーマが全く異なるため、単純に単語帳の英語と日本語の組み合わせを覚えていっても、真にその英単語を使えるようにはなりません。 そのためには、単語を調べる際に「その単語が使われている構文」、「その単語と共起する単語」、「その単語の頻度」、「その単語の使われる文脈」、「その単語の多義の構造」、「その単語の属する意味ネットワークの知識」の6つのポイントを意識して英単語を覚ええることにより、氷山の表面下に英語スキーマを構築できるようになります。 これは、英語のスキーマを理解することの他に、本書のバックグラウンドにある認知学的視点で、深いレベルでの情報処理を行った方が、記憶の定着にも良いという意味合いも含まれているようです。
多読でなく熟読(熟見)
本書では多読ではなく熟読を英語スキーマの獲得の方法として進めています。その背景として、多読学習とは「ほとんどの単語を知っている文章の中でたまに出てくる知らない単語の意味を、読み取った内容と、自分が持っているスキーマを使って推測する練習」と理解しているためです。 そのため、コーパスの項でも説明した通り、熟読(あるいは熟見)のような深いレベルでの学習をすることで、新たな英語スキーマを構築できると説明されています。
熟書
英語のアウトプットの技能としてスピーキングとライティングがあると思いますが、スピーキングは会話というリアルタイムの時間制限のある中で、いきなり英語スキーマを構築するのは難しいと本書では説明されています。そこで行うのが「熟書」。
ライティングでは(所謂チャットのようなリアルタイム性のあるものを除き)スピーキングのような厳しい時間制限はなく、ある程度のゆとりを持ってアウトプットを行うことができます。このゆとりを英語のスキーマの意識の時間に当てることで、意識的な英語のスキーマから無意識的なスキーマへと押し上げることができるとのことです。 また、ここでも「熟」とつくように、じっくりと時間をかけ、ときにはその文を読み返し、さらにはより良い文に書き換えることで、新たな英語スキーマも構築できる。ということになります。
総評
読み終えてみて、英語学習にありがちな、「言語学習には時間がかかるから忍耐強く」的なメッセージでなく、なぜこうしなければいけないのかを、認知学的に説明しながら学習方法などについて記載されているので、個人的にすんなりと頷ける部分が多いです。 また、コーパスを使った学習法なんかでは、実際のWebのツールなんかも紹介されているので、実践的で受け入れ易いのかなと思っています。
読んでみて、おそらく本書のターゲットとしては、ある程度文法知識などの英語の基礎が固まった、更に英語力を伸ばしていきたい人あたりなのかなと思っていますので、ちょうど自分のような人間にはちょうど良さそうです。
とりあえず、海外ドラマの熟見、Twitterでのライティング、コロケーションなどを意識した英単語学習あたりを日々の学習に取り入れてみて、様子を見てみようかと思います。
何か良い効果を実感できるようになったら、本ブログでも紹介したいと思います。
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